• 左:熟豊ファーム 石飛社長
  • 右:銀閣寺大西 大西常務


対談~JUKU誕生秘話~

熟豊ファーム(石飛修平社長)×銀閣寺大西(大西英毅常務)

大西和牛と言えば未経産雌牛や去勢牛の肥育が一般的である中、経産牛肥育専門で熟豊ファームを設立されたのはどうしてですか?
石飛“地元の成牛市に行った時に数頭経産牛を肥育したものが出ていて、その牛の購買者さんにお肉を分けてもらって食べてみたんです。一般にサシといわれるものはありませんでしたが、肉々しくてすごく美味しかったです。
その牛は、繁殖農家の方が、片手間で肥育したもので、しっかりと肥育されたものではありませんでした。このときに、経産肥育を本気でやってみたらどれくらい美味しくなるんだろうと思ったのが始まりです。”
大西実際にやってみてどうでしたか?
石飛はじめは、平均的に同じ肉質、同じ枝重量の牛をつくることができませんでした。
大西それはどうしてですか?
石飛熟豊ファームに集まる経産牛は、母牛としての役目を終え、色んな農家さんが出荷された牛たちです。子牛と違って小さいときから同じ環境の中で肥育しているわけではありません。
農家さんごとに飼い方も違えば、食べてきた餌も全く異なります。そういう牛たちを平均的に仕上げるのはとても難しかったです。
大西私たちも、年間一万頭以上牛を見ていますが、熟豊ファームに出会うまでは経産牛で平均のとれたものを見たことがありませんでした。
大西どうやって平均のとれた牛づくりができるようになったのですか?
石飛今まで繁殖牛として活躍してきた母牛の、和牛としての能力を引き出せるように、健康的な環境でビタミンコントロールにこだわらず、ビタミンやミネラルを与え、一頭一頭の性質に合わせた個体管理を徹底するようにしたことで平均的な牛が作れるようになりました。
石飛銀閣寺大西さんは、これまで未経産牛や去勢牛の取り扱いしか無かったそうですが、経産牛を扱おうと思ったのはどうしてですか?
大西海外では、経産牛は価値のあるものという考え方が一般的です。しかし、日本では経産牛は価値のないものという感覚が根付いています。世界19カ国に和牛を輸出していく中で、経産牛の扱いの違いに驚き、経産牛を大切にするという考え方は、今後の日本畜産界に必要なことだと感じるようになりました。
私も、経産牛のお肉には若い牛とは違ったおいしさがあることは認識していました。海外の食文化に鑑みると、和牛の経産牛を輸出できたらお客様に喜んでいただけるだろうと思ってはいましたが、平均のとれた経産牛を作れる農家さんがいなかったので、半ば諦めかけていたところで、熟豊ファームさんと出会いました。
初めて熟豊ファームの枝肉をみたとき、平均のとれた等級・枝重量におどろき、これまで経産牛を買ったことなどなかったのですが、即決で買いました。
石飛私たちも、大西さんは未経産牛しか取り扱われないと思っていたので、買っていただいて驚きました。
さらに、すぐに輸出を提案していただき、もっと驚きでした。
石飛経産牛を「経産牛」として売ることにこだわりを持ち、経産牛の美味しさ、素晴らしさをアピールしてくださる業者さんに初めて出会い、認められたことがとても嬉しかったのを今でも覚えています。
また、自分たちでも気づかなかった経産牛のもつ魅力や、サステナビリティやアニマルウェルフェアの観点からみた社会的意義についても教えていただき、ますます自分たちの牛に自信が持てるようになりました。
これからも、次世代の畜産業界の発展のため、一緒に取り組んでいけたらと思います。
大西今後も一緒にわくわくする取組を続けていきましょう。